どもです。
とある、ゼミOB飲み会でのお話。
宴もたけなわとなり、
お開きとなった後、数十名の先輩方がぞろぞろと座敷を出て行く。
一番の若造である私は最後の方に座敷を出ることになった。
忘れ物がないかを確かめる任を負ったからである。
スマホ等が忘れ物として考えられそうだったが、
特にそれらしきものは無く、その場を後にしようと思った。
座敷なため、当然、靴は脱いでおり、
結構な高さと幅のある靴箱にそれらは収められていた。
「むむっ・・・・・・?」
靴箱の周辺には何故か先輩方が人集をつくっていたが、
「とにかく、他の人は一旦、店を出てください」
という声を合図に、徐々にその数は減っていった。
近づいてみると、
何かを探す風の女性の先輩と、
不安そうな顔をしてこれまた何かを探している2人の店員が目に入った。
どうやら、この先輩の靴を探しているようだった。
靴箱を慌ただしく探し回り、
「誰か他の人が間違えて履いたのでは?」
「別の靴箱に移動しているのかもしれない、探しに行こうか?」
といった相談が耳に入る。
一つ上の別の先輩が再度、靴箱を探し始めたため、私も手伝うことにした。
靴箱をよく観察すると、天井高く、また、床のところまでその段はあった。
店内は薄暗く、ありがちな雰囲気作りをしている。
「先輩、靴の色は何ですか?」
誰に声をかけるでもなく、私はなんとなく訊ねてみた。
「黒っぽい……」
靴を失くした先輩か、それとも、隣で靴箱を確認している先輩のどちらかともわからなかったが、
微かにそう聞こえた。
よし、頭を使うときか……
と思い、すぐに頭を過ぎったのは、
この店内の薄暗さと、かなり低い位置にある靴箱の段だった。
靴箱は一つ一つ扉がついており、それを手前に引っ張って出し入れするタイプだった。
私は下段の方に関しては、靴箱の中を目視するだけではなく、
手でいちいち探るようにした。
すると、一番下の段。
「先輩、この靴ですか?」
と訊ねつつ、私は一足の靴を差し出した。
「えっ、何処にあったの?」
という言葉には喜びと驚きが入り混じっていた。
そして、店員さんへの迷惑を詫びて、私たちはお店を後にした。
下の方の段となると、薄明かりも相まって、
屈んでいても靴箱の中をはっきりと確認するのは難しく、
靴の色が黒だったというのも、その捜索を困難にしていたようだった。
それでは、また。
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